

全篇ギャラリーfull gallery
第八章
魅力がある」篇
外国からやってきた友人を、地元犬山に案内する。
全身で驚いて、楽しんで、この街を味わう友人。
彼のおかげで、この街のことがもっと好きになりそうだ。
時間を忘れる景色です。」
外国から遊びに来た友達を、現存する日本最古の天守をもつ犬山城に連れてきた。沈んでいく夕日が木曽川や犬山の町を黄金色に染める。思わず息をのむその光景に写真も撮らずに魅入ってしまう。ただ景色を眺める。戦乱の時代にも、そんな時間があったかもしれないな。
この味に繋がっている。」
留学していた時の友達と、国宝の茶室「如庵」がある有楽苑にやってきた。丁寧に造られた日本庭園を進み、弘庵でお茶をいただく。大きな窓は外との境界を曖昧にし、光を注いでいる。そうか、全てはこの一杯の味を高めるためだったのだ。先人の知恵に、自然と背筋が伸びていた。
※特別な許可を得て撮影しております。
第七章
家族に送り出されて、今日は親友と犬山へ。
守って守られて、共に発展してきた犬山城と木曽川。
本物がある町で見つけたのは、本物の友情でした。
江戸時代からの町割りが残る城下町を、ランドセルを背負っていた頃からの友達と進む。日常から少し離れたこの町にいるのは、ありのままの私だ。着物を着て人力車に乗り込む。大人げなくはしゃげる私って、案外いい年齢の重ね方をしてるのかも。
私たちも同じかも。」
昔からの親友と、久しぶりに犬山にやってきた。十代の頃は駆け足で通り抜けた木曽川のほとりを、のんびりと歩く。心地いいのは、犬山城と木曽川の飾らない美しさのせいだけではない。遠慮も見栄も必要なくなった私たちの間には、この町に負けない歴史があるから。
第六章
変わらないもの」篇
娘が幼い頃に来た犬山へ、再びやってきた。
もうすぐ家を出る娘との、泊まりの小旅行。
娘の寝顔を眺めるなんて、何年ぶりだろうか。
気づけばこの子のことばかり。」
朝の澄んだ空気の中、紅葉のトンネルを通って寂光院に辿り着く。はじめての写仏体験。娘が元気で過ごせますようにと願いながら、仏様の絵を描いていく。思えば、この子が生まれてからずっと、願い事は娘のことだった。仏様のおかげで、そんな幸せに気づくことができました。
このまちの伝統は、器が大きい。」
娘が連れてきてくれたのは、紅葉柄が特徴的な犬山焼の窯元。おしゃべりに夢中になっていたら、ちょっと大きめのお茶碗が出来上がった。ご飯を食べるたびに、今日を思い出すだろう。形になる思い出っていいかもしれない。きっとずっと、大事にできるから。
第五章
長年連れそった妻を連れて、泊まりの犬山旅。
日帰りじゃないから、のんびりと。
犬山にも、妻にも。まだまだ知らない魅力がありそうだ。
そんな帰り道です。」
「どうしてこんな高いところに…」なんて思いながら登った成田山の階段。その答えは、ご祈祷からの帰りにあった。目の前に広がる街並みと澄んだ空気に、心が軽くなる。いろんな気持ちの人が訪れるこの場所で、皆がこの景色を見ながら帰る。ここは確かに、名所だった。
犬山ローレライ麦酒。このビールは、木曽川の伏流水を使ってここ犬山で作られている。城下町にある古民家で頂く一杯は、犬山旅のはじまりにぴったりだ。このあとどう巡ろうか、作戦談義にも花が咲く。ふたり並んで歩いてきた僕らだから、向き合う時間も大事にしよう。
第四章
見せたいもの」篇
社会人になって3年が経った。
憧れだった父も、ついに還暦に。
そのお祝いに、両親を犬山に連れてきた。
大人になった僕でした。」
子どもの頃いろんな場所へ連れていってくれた両親を、犬山に連れてきた。歴史に文化、それに風情。本物がある町で、今までとはちょっと違う自分を見せたかった。そんな下心なんて、きっとお見通しなんだろうけど。それでも喜んでる二人の顔は、本物だったと思う。
誰かのための贅沢なんだ。」
父と母に用意したのは、国宝犬山城が目の前で味わえるホテルディナー。テーブルに並んだのは、今まで見たことのないような美しい料理ばかり。いつもと変わらず賑やかな母に、今日は酔う前から饒舌な父。喜んでくれてよかった。ふたりの姿が、僕の心まで満たしてくれた。
すぐ隣にありました。」
寺好きの母のために、瑞泉寺へやってきた。その途中「この門は、犬山城から移築されたって知ってるか?」と父が自慢げに言う。すかさず母が「昨日調べたのよね」と明かした。笑い合うと余計に息が切れた。階段をのぼりながら、「次の旅はいつにしよう」なんて考えてた。
第三章
仕事では責任のある立場になって、
やりがいもあるけど忙しい毎日を送っている。
久しぶりの連休、ふらっと旅に出ることにした。
大人になるほど難しいから。」
窓の向こうで、国宝犬山城が見守っている。ふーっと深く息を吐いて、私の旅が静かに始まる。つい仕事や将来のことを考えてしまう私は、今日はお休み。何百年ものあいだ人々が己を見つめてきたこの場所で、私はただ私と向き合う。なんと贅沢な時間だろうか。
第二章
これから」篇
付き合ってた頃から、二人でよく出かけた。
今回は歴史や文化が息づく大人な町、犬山へ。
今までとは違う楽しさが、ここでは味わえそうだ。
まだまだこれから。」
付き合ってた頃から、ふたりでいろんなところへ出かけた。久しぶりの旅は、国宝が2つもあるという犬山へ。何百年とつづく建物や文化が、私たちには新鮮。毎日一緒にいる彼が、提灯づくりで見せた表情もどこか新鮮だった。私の宝物は、すぐ隣にあったんだ。
変わらない姿へ。」
いつの間にか、夕陽が犬山城を照らしていた。電気が消えて看板が見えなくなると、今度は趣のある町並みがくっきりと見えてくる。ここは、江戸時代からの町割りがそのまま残る城下町。「江戸時代ってこんな感じだったのかな」なんて彼は⾔いながら、いつもより少しだけゆっくりと歩いた。
そんな場所がありました。」
日本庭園 有楽苑の中に、その場所はあった。丁寧に敷かれた飛び石を渡って、木々の間を進む。「元庵」と書かれた茶室の縁側に腰を下ろし、ただのんびりと他愛もない話をする。温かい光とやわらかい風を感じながら、しばし何もしない時間を楽しもう。
第一章
趣味のカメラを片手に、国宝犬山城へ。
日本最古の天守を持つらしい。
奥深いその城を、じっくり愉しむとしよう。
相手に不足なし。」
旅の楽しみは夜にもある。巡った場所、見たものを思い出しながら、グラスを口に運ぶ。ひとり旅を噛み締めるこの時間に、今日は相手がいる。国宝犬山城だ。これが、日本最古の天守の、一番新しい味わい方。犬山には大人にふさわしい、本物がある。