手を動かして
犬山の和文化と出会う、
上質な時間。

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歴史ある町並みや文化が今も息づく犬山。今日は、和菓子づくり体験と、当時の面影を残す堀部家住宅を訪ねてみることに。慌ただしい日常から少し距離を置き、目の前の時間をゆっくり味わう。そんなひとときのなかで、このまちに流れる穏やかな時間と「余白」の豊かさに出会うことができました。

若松屋阡壱での和菓子づくり体験季節をうつす、和菓子づくり。

城下町から南へ少し歩いたところにある「若松屋阡壱」は、昭和2年創業の老舗和菓子店です。
ふわりと甘い香りが漂う店内。ガラスケースに並ぶ和菓子はどれも小さな作品のようで、やわらかな色合いと繊細な形に、思わず見入ってしまいます。今回はそんな和菓子を自分の手で作れると聞いてやってきました。

自分が作っていて楽しいものを
突き詰めてきた。

ここ「若松屋阡壱」は、店主のおじいさまが始められたお店で、今は三代目。とはいえ、味を受け継ぐことを重視しているわけではないそうです。変わらず受け継がれているものは「自由にやっていい」という思想。自分が楽しいと思えるものを作ることが一番だという考えです。じつはこのお店の名物「桃酔菓」は二代目が考案した商品ですが、三代目がさらに作り方を工夫してアップデートしています。長く愛される理由は、変えないことより、時代に合わせて進化していることなのかもしれません。

そんな三代目の一番のこだわりは、材料。桃酔菓に使用する桃などの果物を、全部ではありませんがご自身で作られています。買っているものも値段にとらわれず、おいしいと思ったものを選んでいます。高価なものでも、手頃なものでも、おいしければ取り入れる。いろんな果物を食べ比べて、自分が納得できる果物を選んでいるのだそう。その手間と確かな目利きが、おいしさの秘密なんですね。

やわらかな感触に、
心落ち着く時間。

ではさっそく、和菓子づくり体験の時間です。となりで一工程ずつお手本を見せてくれるので、真似しながら進めていきます。餡を包み、形を整えていく。ほんの少し力を入れすぎるだけで、形が崩れてしまいそうな繊細さ。ドキドキしながら手を動かしていると、「ハードルが高そうに思えるけど、和菓子作りは意外と簡単なんですよ」と話してくれました。

生地は材料を混ぜて蒸すだけで、お家でやるなら電子レンジでチンでも大丈夫。分量さえ間違えなければ、どこでも簡単に作ることができます。お家で作る醍醐味はできたてを食べられること。もっとたくさんの人にお家でも和菓子作りを楽しんでほしいという思いから、まずはハードルを下げる場としてこういった体験を行なっているのだとか。

季節の景色を映し取るように、ひとつずつ丁寧につくっていく和菓子。職人の感覚や技術が詰まっていることに気づかされます。完成した和菓子を見てみると「意外とうまくできたかも」なんて。でも“うまく作る”より、“向き合う時間を楽しむ”体験だなと感じました。

堀部家住宅に残る、武士の誇り凛とした空気の、その理由。

どこか穏やかな気持ちになり、その余韻に浸りながら次のスポットへ。訪れたのは、犬山に唯一残る武家風住宅「旧堀部家住宅」。ここは、犬山城主・成瀬家に仕えた家系である堀部家の住まいでした。

明治16年に主屋が建てられたので武家風屋敷と呼ばれますが、建物の随所に“武士の誇り”が残されています。たとえば、床の間をもっとも格式高い空間として設えた間取り。来客の身分によって使い分けられた玄関。部屋ごとに変化する天井や梁の意匠。そして、屋敷のあちこちに祀られた神棚。
「なんとなく、武家の香りがするんです。」そう話してくれたのは、屋敷の管理に携わる鈴木さん。この屋敷の存続に尽力したメンバーの一員でもある鈴木さんの言葉通り、この空間には凛とした空気が流れています。

屋敷に刻まれた、
当時の暮らしの記憶。

さらに邸内には、甲冑や屏風、掛け軸など、堀部家ゆかりの品々も。文人や政治家が集ったというこの家は、地域文化の交流の場でもあったことが伝わってきます。

かつて犬山の周辺には桑畑が広がり、養蚕は暮らしに根づいた産業でした。堀部家も蚕を育てながら商いを広げ、三代にわたって少しずつ建物を増築していきました。2階には養蚕を行っていた部屋があり、その時代の記憶が残っているように感じます。

思い思いに彩る、
たったひとつの提灯づくり。

邸内をひととおり見学させてもらったあと、提灯の塗り絵体験をさせてもらいました。犬山にはかつて4、5軒の提灯屋があったそうですが、途絶えてしまいました。今から20数年前に一から復活させ、今では祭り提灯や城下町の店舗の看板提灯などを作る傍ら、提灯に縁のない方々にも手にとってほしいという想いから「触れながら知れる体験を」と始めたそうです。

真っ白な提灯に、好きな色を重ねていく。同じ図案でも選ぶ色やマスキングテープでまったく違う表情になるのがおもしろいところです。小さなお子さまから海外の観光客まで訪れる人はさまざま。完成した提灯に明かりを灯すと、自分だけの小さな作品ができあがります。お家でも気軽に提灯の明かりを楽しめるよう、提灯の中に簡単に灯せるLEDライトが入れられるようになっています。

縁側で味わう、贅沢な時間。

体験が終わったら、併設のカフェでおいしいコーヒーを。こちらも鈴木さんが営んでおり、サイフォンで淹れたコーヒーが楽しめます。理科の実験のように湧き上がっていく過程は、眺めているだけで胸が弾みます。コーヒーを受け取ったら縁側に座って飲むのがおすすめ。静かで落ち着いた雰囲気のなかで飲む一杯は格別です。鈴木さんは「賑やかすぎない場所だからこそ 、明治時代に触れられる」と話します。

時代の趣が残る落ち着いた空間で、ものづくりを楽しみ、ゆったりと流れる時間を過ごす。歴史を守るだけではなく、今の暮らしの中で使い続けていくこと。堀部邸は、そんな文化財の新しいあり方を体現している場所なのかもしれません。

これが、私にとっての
「大人アガルひととき」。

手を動かし、文化に触れ、その場所に流れる時間を味わう。犬山で出会ったのは、“ゆったりとした豊かさ”でした。何かを詰め込むのではなく、目の前のひとときを大切に過ごす。そんな時間が、慌ただしい日常のなかで忘れかけていた心の余白を思い出させてくれる。これが、私にとっての「大人アガルひととき」でした。

今回訪れた場所

若松屋阡壱犬山のまちで長く愛される和菓子店。季節の和菓子づくり体験では、職人に教わりながら一つひとつ丁寧に形を整えていきます。季節を映した和菓子の美しさや、手仕事の奥深さに触れられるのも魅力です。

住所:
〒484-0081
犬山市大字犬山字南古券186番地
営業時間:
9:00~18:00
※水曜日のみ9:00~12:00
定休日:
日曜日
公式サイト

旧堀部家住宅 提灯工房&カフェ みな蔵国登録有形文化財として保存されている歴史ある建物。提灯の塗り絵体験では、自分の手で色を重ねながら犬山の文化に触れることができます。併設のカフェでコーヒーを味わいながら、歴史ある空間に流れる穏やかな時間を楽しめるのも魅力です。

住所:
〒484-0084
犬山市大字犬山字南古券272
開館時間:
12:00~18:00
休館日:
毎週月曜日、火曜日
(祝日の場合はその翌日)、
12月28日~1月4日および冬季休館日
公式サイト
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