長く愛される味には、
理由がある。
犬山の食めぐり。

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城下町を歩いていると、どこか懐かしい香りや味に出会うことができます。犬山には、長い年月をかけて受け継がれてきた食文化が今も息づいています。歴史ある建物で味わう季節の和食、昔ながらの製法を守り続けるげんこつ飴、そして城下町の名物として親しまれてきた菜飯田楽。そこには、ただ「おいしい」だけではない、このまちの風土や人々の営みが詰まっています。今回は、犬山ならではの味をめぐりながら、このまちが大切にしてきた時間に触れていきます。

登録有形文化財で味わう、犬山の四季特別な日に訪れたい、
歴史ある一軒。

今回は、犬山の四季を映した食事を嗜みに、城下町の一角にある「日本料理 古今」へやってきました。
こちらのお店は、築200年の歴史を持つ小島家の建物をリノベーションして作られた宿泊施設「宿−SHUKU−」の一角にあります。

もともとの建物が持つ趣と、新しい感性が溶け合う空間。長い年月を重ねた梁や建具、欄間や襖、照明、器に至るまで、当時のものを大切に受け継ぎ、歴代当主のこだわりが今も随所に息づいています。なかでも「兎の間」に見られるうさぎの意匠は、そのこだわりを感じられる一つ。欄間や細工の中にさりげなく隠れていて、思わず探したくなります。

犬山の風土を味わう、
一皿と一杯。

そんな特別な空間でいただけるのが、季節ごとに内容が変わる和食のコース料理。季節の恵みを生かした一皿一皿が並びます。とくに印象に残ったのは、やさしい出汁の香り。古今のモットーである「料理は出汁に始まり、出汁に終わる」を体現するように、一品ごとにほっとする余韻があります。

そして料理とともに味わったのが、犬山に古くから伝わる薬酒「忍冬酒(にんどうしゅ)」。忍冬とはスイカズラのことで、かつては滋養酒として親しまれた犬山ゆかりのこのお酒は、ほのかな甘みとやさしい香りが特徴です。今回はロックでいただきましたが、ほんのり甘味を感じるすっきりとした飲み口が和食との相性抜群。土地の歴史をおいしく味わえる一杯でした。

また、できるだけ地元の新鮮な食材を用いて、調味料も自然由来の素材から作られたものを選び、化学調味料に頼らず手間をかけて仕上げているそう。じんわりと身体に染みていくようなおいしさで、「季節を味わう」という和食の魅力を、改めて感じることができました。

藤澤製菓で出会う、変わらないおいしさ150年以上つづく、
犬山のやさしい味。

歴史ある邸宅で季節のごちそうをいただいたあとは、犬山のまちに根付く“昔ながらのおやつ”を探しに。向かったのは、創業約150年の老舗「藤澤製菓」。きな粉と黒糖でつくるげんこつ飴は、犬山を代表する名物のひとつです。城下町に漂う香ばしい香りをたどりながら、その味の秘密を教えてもらいました。

シンプルな見た目の藤澤げんこつですが、その味を守るためのこだわりは並大抵ではありません。とくに店主が大切にしているのが、きな粉。長年使い続けた製粉業者が廃業した際には、全国からきな粉を取り寄せて食べ比べを重ねたそうです。粒子の細かさ、香り、味わい――。何度も試作を繰り返し、ようやくたどり着いたのが、現在の特注きな粉でした。さらに黒糖は、沖縄・波照間島から取り寄せたものを使用。「材料だけは絶対に妥協したくないんです」その言葉どおり、創業以来受け継がれてきた味を守り続けています。

昔ながらの手仕事で
守ってきた、変わらない味。

そんなげんこつ飴づくりを、店頭で見学できるのも藤澤製菓の魅力です。きな粉をまとわせた飴を冷ましながら丁寧にこね、長い棒状に伸ばしていきます。驚いたのは、そのほとんどが職人の感覚で行われていること。手で分け、手で伸ばし、手で確かめる。こねているうちに飴は少しずつ固くなり、絶妙なタイミングで機械へ。

一本の長い飴が次々と小さなげんこつ飴へと姿を変えていく様子は、つい見入ってしまいます。一日に作れる量には限りがありますが、その数はなんと約9,000個。それでも手作業でしか生まれない味があるから、この製法を守り続けているそうです。昭和の時代で終わるはずだったという藤澤げんこつ。「この味を残してほしい」というお客さまの声に背中を押されながら、今日も作られ続けています。

犬山散策のおみやげに、
おひとついかが?

現在は定番パッケージに加え、おみやげにぴったりなパッケージも充実。個包装タイプや、犬山の人気キャラクター「わん丸君」をあしらったかわいらしいパッケージも並びます。自分用のおやつにはもちろん、職場や友人へのおみやげにもぴったり。一つ食べると、またもう一つ食べたくなる。そんな不思議な魅力を持つ犬山ならではのげんこつ飴を、城下町散策の途中に立ち寄って、できたての香りとともに味わってみてください。

城下町が育んだ、犬山名物「菜飯田楽」香ばしい味噌の香りに
誘われて。

そしてお次は、犬山の食文化を語るうえで欠かせない一軒へ。城下町のそばで長年暖簾を守り続ける松野屋です。ここでいただけるのは、犬山名物として親しまれてきた「菜飯田楽」。昔も今も変わらず、多くの人のお腹と心を満たしてきた郷土の味をいただきます。

そもそも「菜飯田楽」は、菜飯と味噌田楽を組み合わせた東海地方を代表する郷土料理。江戸時代にはすでに東海道を行き交う旅人たちに親しまれ、街道沿いの名物として広まったといわれています。犬山もまた、城下町として多くの人が行き交い発展してきた町。木曽川の水運や街道文化によって栄えた歴史があり、人々が集まる場所には自然と土地ならではの食文化も根づいていきました。

赤味噌と菜飯が織りなす、
伝統の味。

その中で長く親しまれてきたのが、菜飯田楽です。そのおいしさを支えているのは東海地方ならではの食材。松野屋では三河の赤味噌をベースに、昔から受け継がれてきた配合で味噌を調合しています。

豆腐は国産大豆を使った特注品。串に刺して焼いても崩れない絶妙な固さに仕上げられています。さらに香りの決め手となるのがぶどう山椒。お客さんから「譲ってほしい」と言われることもあるほどで、この一振りが味に奥行きを生み出しています。

運ばれてきた田楽は、こんがり焼かれた豆腐に艶やかな味噌がたっぷり。ひと口食べると、赤味噌の濃厚なコクと甘みが広がり、あとから山椒の爽やかな香りがふわりと抜けていきます。そして、その味を受け止めるのが菜飯です。味噌の余韻が残る口に菜飯を運ぶと、青菜の風味がすっと広がり、また次の一本に手が伸びます。犬山の歴史や暮らしそのものを味わうような料理で、何十年も愛され続ける理由がわかりました。

これが、私にとっての
「大人アガルひととき」。

今回味わったのは、ただのグルメではありませんでした。歴史ある建物に流れる時間、百年以上守り続けられてきた製法、そして地域の人々に愛されながら受け継がれてきた郷土の味。その一皿、一粒の向こうには、このまちが積み重ねてきた物語がありました。受け継がれてきた味に出会うたび、このまちの時間の流れを少しだけ分けてもらえたような気持ちに。そんなひとときこそが、私にとっての「大人アガル犬山」でした。

今回訪れた場所

古今築200年を超える歴史ある建物を活用した日本料理店。季節の食材を生かした和食とともに、犬山ゆかりの忍冬酒を味わうことができます。歴史を感じられる空間で過ごすひとときは、まるで犬山の四季や文化を五感で楽しむような時間です。

住所:
〒484-0083
犬山市犬山東古券633
営業時間:
朝食 7:30~9:30
昼食 11:30〜14:30
(最終入店13:00)
夕食 18:00〜21:00
(最終入店19:00)
定休日:
火曜日・水曜日
公式サイト

藤澤製菓創業150年以上の歴史を持つ、犬山名物「げんこつ飴」をつくっているお店。昔ながらの製法を守り続け、店内では実際に飴づくりの様子を見学することもできます。素朴でどこか懐かしい味わいは、おみやげにもぴったりです。

住所:
〒484-0083
犬山市東古券161
開館時間:
9:30~17:00
定休日:
不定休
公式サイト

松野屋創業以来、同じ場所で菜飯田楽を提供し続ける老舗。香ばしく焼き上げた豆腐に赤味噌を塗った田楽と、やさしい味わいの菜飯の組み合わせは、シンプルだからこそ飽きがこないおいしさ。ふとまた食べたくなる、そんな一皿に出会えます。

住所:
〒484-0081
犬山市犬山北首塚28-1
開館時間:
11:00~15:00(L.O.14:30)
定休日:
木曜日
公式サイト
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