名古屋鉄道 - MEITETSU

運賃改定の実施について

 名古屋鉄道は、2023年5月26日(金)に国土交通大臣宛てに鉄軌道旅客運賃の変更認可申請を行い、9月1日、国土交通大臣より認可され、運賃改定を2024年3月16日(土)に実施しました。

 今後も当社では、当社グループの経営ビジョンに掲げている、使命「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」のため、(1)安全・安心の徹底、(2)お客さまサービスのさらなる向上、(3)社会の要請に応える価値の提供、(4)持続可能な鉄軌道事業の実現に向けた取り組みの各種施策を実施してまいります。

改定の理由について

 当社が主な事業エリアとしている中京都市圏は、三大都市圏の中では人口密度が低く、マイカー保有率も高いことから移動における公共交通の分担率が低水準であり、鉄軌道事業としては従前から厳しい環境にありました。そのような中、1995年の運賃改定以来、消費税率変更に伴う運賃改定を除き、運賃を据え置いて事業を行ってまいりました。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行によるテレワークなど新常態の定着やマイカー通勤をはじめとした他の輸送モードへの転換による通勤利用者の減少等により、輸送需要はコロナ前水準に戻らない見込みであるとともに、電力料金や資材価格の高騰による経費増加の懸念もあり、厳しい状況は今後も継続する見込みです。
 一方、鉄軌道事業を継続し、永く社会に貢献し続けるためには、安全・安心・安定輸送の確保に必要な既存設備の更新に加え、社会環境の変化に合わせた投資が必要不可欠となります。
 今後も構造改革による経費の削減などに継続して取り組んでまいりますが、新常態の定着や経費増加が懸念される状況の中において、事業継続に必要な対応を着実に実施していくために、不足する費用の一部についてお客さまにご負担をお願いするため、28年6カ月ぶりの運賃改定を実施させていただくこととしました。

主な改定内容について

初乗り
運賃
改定率
※括弧内は増収率
定期割引率
普通
運賃
通勤
定期
通学
定期
定期
合計 通勤
定期
通学
定期
現行 170円 45.1% 82.2%
改定 180円 10.5%
(9.3%)
11.6%
(10.6%)
0%
(0%)
9.3%
(8.5%)
10.0%
(8.9%)
44.6% 84.3%
  • 普通運賃でご利用の多い7kmまでの区間は改定率を抑えます。
  • 通学定期は、家計負担に配慮し運賃を据え置きます。
  • 知多新線、豊田線、羽島線、空港線に設定している加算運賃は変更しません。
  • 名古屋本線の一部区間に設定している暫定運賃は、対象区間や設定額を区間ごとに見直し、新たに特定運賃を設定します。
  • 過去の駅移設に伴い設定しておりました特定運賃(上飯田駅・西ノ口駅・柳津駅を発着する一部区間)は、今回の改定に併せて廃止し、通学定期を含め本来のキロ程に応じた運賃を適用します。

※表中の「現行」は2024年3月15日まで、「改定」は2024年3月16日以降を指します。

(1)普通旅客運賃(大人)

(単位:キロ、円)
運賃計算
キロ程
改定前運賃 改定後運賃
1~3 170 180
4 190 210
5~7 230 250
8 240 270
9~12 300 330
13~16 360 400
17~20 410 460
21~24 460 510
25~28 510 570
29~32 570 630
33~36 620 690
37~40 680 750
41~44 750 830
45~48 810 900
49~52 880 980
(単位:キロ、円)
運賃計算
キロ程
改定前運賃 改定後運賃
53~56 950 1,050
57~60 1,010 1,120
61~64 1,070 1,190
65~68 1,140 1,270
69~72 1,190 1,320
73~76 1,240 1,380
77~80 1,290 1,430
81~85 1,350 1,500
86~90 1,400 1,550
91~95 1,450 1,610
96~100 1,500 1,670
101~110 1,590 1,760
111~120 1,680 1,860
121~130 1,760 1,950
131~143 1,850 2,050

・知多新線・豊田線・羽島線・空港線に設定されている加算運賃に関するご案内は こちら
・名古屋本線の一部区間に設定する特定運賃については、4.特定運賃の設定について をご覧ください

(2)通勤定期旅客運賃(大人)

・知多新線・豊田線・羽島線・空港線に設定されている加算運賃に関するご案内は こちら
・名古屋本線の一部区間に設定する特定運賃については、4.特定運賃の設定について をご覧ください

(3)通学定期旅客運賃(大人)

家計負担に配慮し運賃を据え置きます。



なお、三河知立駅、西ノ口駅、柳津駅、上飯田駅を発着駅とする運賃は(1)~(3)に記載の内容と異なる場合があります。詳細は各駅の運賃表をご確認ください。

  三河知立駅 西ノ口駅 柳津駅 上飯田駅

設定区間

以下の区間において特定運賃を設定いたします。

・表中区間の普通旅客運賃(一部区間)および通勤定期旅客運賃については、( )内の金額で特定運賃を設定いたします。
・内方の駅相互間の運賃が上記区間の運賃を超える場合は、当該区間の運賃をもって内方の駅相互間の運賃とします。

運賃改定に合わせて以下の変更を行います。

(1)特別車両料金の改定

改定前料金 改定後料金
基本料金 360円 450円
閑散時間帯割引料金※1
(平日9時台~16時台および土休日全時間帯)
300円
車内精算料金※2 500円

※1 閑散時間帯割引料金は、「名鉄ネット予約サービス」での購入を対象に新たに導入します。(中部国際空港駅発着のご利用は対象外となります。)平日は乗車駅を9時00分から16時59分に発車(時刻表の発車時刻)する列車が対象となります。
※2 これまで車内精算時における特別車の座席指定はできませんでしたが、空席がある場合は車掌が携帯する端末から座席確保を行います。(満席の場合は立席となります。)

料金の改定に合わせて、サービス内容の変更も実施します。
詳細は こちら

(2)精神障害者割引の実施

精神障害者保健福祉手帳をお持ちのご本人とその介護者を対象に、新たに精神障害者割引を導入します。
詳細は こちら

(3)入場料金の改定

改定前料金 改定後料金
入場料金 170円 180円
  • 小児料金は現在の90円より変更いたしません。

当社の取り組み

安全・安心の徹底

今後もお客さまに鉄軌道事業を継続して提供し、安心してご利用いただくための取り組み

知立駅付近の高架化工事

高架橋の耐震補強

AI画像解析の活用による踏切の安全性向上

お客さまサービスのさらなる向上

全てのお客さまが安心し、便利にご利用いただくための取り組み

金山駅のバリアフリートイレ

新型券売機・チャージ機

エリア版MaaSアプリ「CentX」

社会の要請に応える価値の提供

多様化する社会の要請に応え、社会的な責任を果たしていくための取り組み

車内防犯カメラ

車掌シュミレーターを使用した訓練

環境性能に優れた通勤型車両9500系

持続可能な鉄軌道事業の実現に向けた取り組み

長期的な安定経営を目指すための取り組み

モニター付インターホンによる係員対応

ドローンを使用した点検業務の効率化

「あいち認知症パートナー企業・大学」ロゴマーク

運賃改定に関するQ&A

3月16日からの運賃はいくらになりますか?

こちらからご覧いただけます。

改定後の運賃はいつから適用になりますか?

2024年3月16日の始発から適用になります。
2024年3月15日の最終電車までは日付が2024年3月16日に変わった後でも現行の運賃が適用されます。

運賃改定以前に購入した乗車券は3月16日以降も使えますか?

券面の運賃(改定前運賃)でその有効期限内はご利用いただけます。

運賃改定以前に購入した乗車券を払い戻したいのですが、払い戻し額はどうやって計算するのですか?

改定以前の運賃を基準に払い戻し額を計算します。

小児の運賃はどうなりますか?

大人運賃の半額となります。ただし、10円未満の端数は切り上げて10円単位といたします。

加算運賃はどうなりますか?

知多新線、豊田線、羽島線、空港線に設定している加算運賃に変更はございません。

障害者割引はどうなりますか?

身体・知的障害者割引に変更はございません。また、新たに精神障害者割引を導入いたします。
詳細は こちら

特別車両料金の閑散時間帯割引料金はどうしたら適用されますか?

閑散時間帯割引料金は、平日は乗車駅を9時00分から16時59分に発車(時刻表の発車時刻)する列車および土休日全時間帯の列車を対象とし、名鉄ネット予約サービスで購入した場合に適用されます。
ただし、中部国際空港駅を発着とするご利用は対象外となります。

定期券は券売機で買えますか?

manaca定期券の継続購入に限り、以下の券売機にて購入いただけます。

ご購入の方法はこちらをご覧ください。

入場料金はどうなりますか?

入場料金は、初乗り運賃に合わせ、大人180円に変更いたします。小児は現在の90円より変更いたしません。

改定に関する参考情報

鉄道事業の概要

 当社は、1894年の創業以来、「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」という使命のもと、地域の公共交通を担う企業として、地域と共に歩んでまいりました。
 当社の鉄軌道事業は、豊橋、名古屋、岐阜等の各都市を結ぶ名古屋本線を中心に計20路線、営業キロ444.2km、駅数は275駅を有しており、愛知・岐阜両県下に広範な交通ネットワークを形成しています。郊外から名古屋都心部への通勤・通学や日々のお出かけのためのご利用、中部地域の空の玄関口である中部国際空港へのアクセス輸送、犬山、岡崎等沿線観光のための移動手段として、中部圏の交通ネットワークを担っています。

事業環境

 当社が主な事業エリアとしている中京都市圏は、三大都市圏の中では人口密度が低く、マイカー保有率も高いことから移動における公共交通の分担率が低水準であり、鉄軌道事業としては従前から厳しい環境にありました。
 当社路線は、名古屋地区への輸送に大きく依存しており、都市部から離れた線区ではご利用の少ない区間も多く、全線の輸送密度は三大都市圏の大手民鉄の中でも最低水準にあり、収益性という部分でも関東圏、関西圏より低く推移しています。さらに、主要の名古屋本線では他社と競合関係にあり、割引での運賃設定や、お得な乗車券をセットした企画商品の販売等の対策をとってまいりました。
 輸送人員はリーマンショック以降、製造業が集積する地区を中心に、堅調に通勤定期利用者が推移したことやインバウンド需要拡大に伴う中部国際空港利用者の順調な増加等もあり、2018年度は3億9千万人のお客さまにご利用いただいていました。しかし、新型コロナウイルスの影響もあり2020年度は2億9千万人と25%程度の減少、2021年度は3億1千万人と20%程度の減少となりました。費用削減に努めたものの、鉄軌道事業は2020年度・2021年度の2期連続での営業損失を計上しています。今後も、テレワークなど新常態の定着やマイカー通勤をはじめとした他の輸送モードへの転換による通勤利用者の減少等により、コロナ前の輸送水準への回復は難しいと見込んでいます。

これまでの取り組み

 厳しい事業環境の中、当社は公共交通の使命を果たすべく、安全・安心・安定輸送の提供に加え、お客さまの利便性向上や沿線地域を活性化することによる需要喚起にも取り組んでまいりました。

(1)安全・安心・安定輸送の実現に関する取り組み
①高架化事業

 踏切付近での事故の危険性や交通渋滞を減らし、都市機能を向上させるため、国や地方自治体が行う鉄道立体交差化事業などに協調し、工事を積極的に進めてまいりました。現在、大手民鉄では2番目となる50kmを超える高架橋延長を有しています。

②災害対策
 南海トラフ地震が想定される当社エリアにおいて、被害を最小限にとどめるため、国の省令や指針に基づき、順次、高架橋の耐震対策などを進めています。このうち、橋桁が落下しないようにする落橋防止は、対象となる橋梁桁数(165箇所)につきまして完了しています。
また、事故・災害等が発生した場合に速やかに対応できるよう、さまざまな状況を想定し、警察・消防等関係機関の協力をいただきながら、異常時における対応方について知識・技能の向上に取り組んでいます。

③車両更新
 2022年度末で1,076両を保有する車両については、計画的に更新を実施しており、特に、2019年度以降導入を進めている通勤型車両9500系・9100系については、車内にバリアフリー基準に対応したフリースペースや防犯カメラ、4か国語に対応した車内案内表示器等を備えています。
 また、既存車両の改良も計画的に実施しており、現在行っている3500系の改良では電子機器(VVVF制御装置や補助電源装置)の冗長性を確保するシステム改良を行っているほか、内装更新工事に併せてフリースペースの整備や異常時にお客さまと乗務員の間で会話のできる非常通話装置を設置しています。

④施設・設備の改良、更新
 大手民鉄で3番目に長い444.2kmの路線網においても安全で快適な輸送サービスを提供するため、振動や騒音を抑えて乗り心地が良くなるロングレール化、レールの歪みを矯正するマルチプルタイタンパーの更新、変電所や踏切といった電気関連施設の改良等を着実に実施しています。

(2)路線ネットワークの拡充による利便性向上
①地下鉄上飯田線との直通運転開始
 2002年度に、上飯田~平安通間にて、鉄道が不連続であったことを背景に地下鉄上飯田線が開業しました。当社小牧線においては、輸送力の増強工事や運行管理体制の強化、車両の新造を実施することで、地下鉄上飯田線との相互直通運転を開始し、開業以降、コロナ禍に入る前まで輸送人員を伸ばしてまいりました。

②中部国際空港へのアクセス鉄道の整備
 2004年度には中部国際空港の開港に伴い、空港線を開業しました。空港アクセス特急2000系ミュースカイの導入をはじめ、常滑線の一部区間の高架化や軌道改良、変電所の増設等を実施し、名鉄名古屋駅~中部国際空港駅間を30分未満で結ぶことを実現しています。開業後も増加する需要に応え、開業時には3両組成であったミュースカイを4両組成化したほか、中部国際空港駅にミュースカイ専用ホームを増設し、ホームドアも整備しました。その他、増加する訪日外国人旅客に向けて、案内の多言語化を実施したほか、車両や主要駅にWi-Fi環境を整備し、安心してご利用いただける環境づくりを進めてまいりました。

③三河地区での取り組み
 主に自動車関連企業や工場が集積する西三河地区において、地元自治体と協力しながら改良工事を実施しており、西尾線では2008年度に南桜井駅を開業したほか、輸送力増強を背景に一部区間で高架化や複線化を実施しました。
三河線では踏切事故防止、交通渋滞緩和のため、三河八橋駅付近の高架化を実施したほか、豊田市の土地区画整理事業に合わせ、土橋駅の橋上駅舎化に協力して取り組むなど自治体と共に利便性の向上に努めています。現在は、知立駅付近や若林駅付近の連続立体交差事業を継続しています。

(3) グループ一体となった沿線地域の活性化
①地域活性化

 自治体や地域と共に観光地づくりや受け入れ態勢の整備に取り組み、犬山エリアでは2007年度から「犬山キャンペーン」を実施するなど、沿線地域の観光資源の発掘や商品化、誘客による活性化を図っています。また、2022年度には不動産・交通・観光を併せた“包括的なまちづくり”の司令塔としての役割を担う「地域活性化推進本部」を新設し、グループ一体となった沿線地域の活性化を積極的に推進しています。

②住みやすい沿線環境の造成
 かつては当社不動産部門において住宅団地の造成・分譲を、近年においてはグループ会社において分譲・賃貸マンションの建設を通して、かねてより当社鉄道沿線に住まいを提供しているほか、駅ナカや高架下の商業施設の開発、保育所や病院等、沿線にお住まいの方の生活を支える施設の運営などを通して、定住人口の増加、ひいては安定的な鉄道需要の創出に努めています。

③沿線ハイキング、歩いて巡拝知多四国の開催
 沿線の魅力を感じていただくため、地元自治体などと連携して実施している沿線ハイキングや、知多四国霊場98ヶ寺を巡る「歩いて巡拝知多四国」等のイベントも開催し、多くの方にご参加いただいています。

(4)利便性・サービス向上に関する取り組み
①駅の改良工事、段差解消等のバリアフリー化
 バリアフリー整備対象駅においては、計画的にスロープやエレベーター等を整備してきた結果、対象駅の約98.5%(136駅中134駅 2021年度実績)で実質的に段差が解消されています。また、1日の乗降人員が10万人を超える金山駅においては、2022年度にエレベーターを増設し、複数ルートでのバリアフリー化を実現したほか、多種多様なお客さまのニーズに合わせた、より機能的で快適なトイレに改修しました。

②ICカード導入と駅務機器の更新
 2010年度には交通系ICカードのmanacaを導入、券売機やチャージ機も整備し利便性の向上を図るとともに、1カ月間のご利用実績に応じてポイントがたまる「manacaマイレージポイント」サービスの提供を開始しました。2012年度には、全国相互利用サービスも開始し、他地域のお客さまもご利用しやすい環境を整備しています。また、継続定期券発売・クレジット決済対応可能な新型券売機や、精算機能を追加した新型チャージ機の導入を進め、お客さまの利便性向上に努めております。

③WEB環境の整備・拡充
 2019年度に特別車両券(ミューチケット)をお客さまご自身で購入でき、座席の指定や乗車列車の変更も可能な「名鉄ネット予約サービス」を開始しました。
また、名鉄グループ沿線・地域(愛知県・岐阜県中心)の交通・生活・観光サービスをつなぎ、シームレスでストレスフリーな移動の実現を目指すエリア版 MaaS(Mobility as a Service)構想を推進しており、2022年3月には当社以外の交通ルートも検索可能なMaaSアプリ「CentX(セントエックス)」をリリースし、順次サービスを拡充しています。

④お客さま案内の拡充
 輸送障害などにより、運休・遅延が発生した際には、当社ホームページに加え、TwitterやCentXの通知機能等を用いてタイムリーな運行情報発信に努めているほか、2021年度には、運行情報発信のシステムを更新し、従来の文字のみによる案内から、路線図を活用した視覚的に分かりやすい案内に切り替えるとともに、列車の走行位置情報を確認できるサービスを開始しました。

⑤インバウンド受入環境の整備
 当社エリアに来訪した訪日外国人のお客さまも安心してご利用いただけるよう、駅・車両での案内の多言語化や駅ナンバリング化、Wi-Fi環境の整備等を実施しています。

今後の取り組み

 今後の取り組みとしては、当社グループの経営ビジョンに掲げている、使命「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」ため、(1)安全・安心の徹底、(2)お客さまサービスのさらなる向上、(3)社会の要請に応える価値の提供、(4)持続可能な鉄軌道事業の実現に向けた取り組みの各種施策を実施してまいります。

(1)安全・安心の徹底
 今後もお客さまに鉄軌道事業を継続して提供し、安心してご利用いただけるよう、高架化・立体交差化の継続や踏切安全対策の推進、鉄道の運行に必要な各種設備の維持・管理、老朽設備の計画的な更新や修繕、耐震補強をはじめとした防災対策などに取り組むほか、新技術を活用した事故・災害対策にも合わせて取り組んでまいります。

(2)お客さまサービスのさらなる向上
 すべてのお客さまが安心し、便利にご利用いただくため、ホームドアをはじめとしたバリアフリー整備や、運行情報を駅ディスプレイに表示する「エムビジョン」の設置等によるお客さま案内の拡充、継続定期券発売・クレジット決済対応可能な新型券売機の導入を進めるほか、エリア版MaaS構想の推進、名鉄ネット予約サービスの機能拡充等に取り組んでまいります。

(3)社会の要請に応える価値の提供
 多様化する社会の要請に応え、社会的な責任を果たしていくため、リニア中央新幹線開業を契機とした老朽化する名鉄名古屋駅の改良、防犯カメラを備え環境性能に優れた新型車両の増備、照明のLED化などの環境への取り組み、災害対策訓練の継続的な実施による異常時対応の強化等も着実に進めてまいります。

(4)持続可能な鉄軌道事業の実現に向けた取り組み
 長期的な安定経営を目指すため、駅業務の効率化・近代化、輸送の適正化、線区特性に応じた運営効率化、保守管理業務の効率化・DX化等、事業構造改革の推進により引き続き収支改善に努めるほか、サービス介助士や認知症サポーターの養成に継続的に取り組むなど、地域に寄り添う体制を推進してまいります。

運賃改定の理由

 当社は、鉄軌道事業としては従前から厳しい環境にある中、経営効率化はもとより、利便性向上や需要喚起に努めることで、1995年の運賃改定以来28年間、消費税率変更に伴う運賃改定を除き、運賃を据え置いて事業を行ってまいりました。しかし、新型コロナウイルス感染症によるテレワークなど新常態の定着やマイカー通勤をはじめとした他の輸送モードへの転換により、輸送需要はコロナ前水準に戻らない見込みであるとともに、電力料金や資材価格の高騰による経費増加の懸念もあり、厳しい状況は今後も継続する見込みです。
 一方、鉄軌道事業を継続し、永く社会に貢献し続けるためには、安全・安心・安定輸送の確保に必要な既存設備の更新に加え、社会環境の変化に合わせた投資が必要不可欠となります。
 今後も構造改革による経費の削減などに継続して取り組んでまいりますが、新常態の定着や経費増加が懸念される状況において、事業継続するために必要な対応の着実な実施、お客さまサービスのさらなる向上、社会の要請に応える価値の提供のため、不足する費用の一部についてお客さまにご負担をお願いするため、運賃改定を実施させていただくこととしました。
 なお、改定にあたっては、普通旅客運賃において日常生活でのご利用が多い7kmまでの短距離区間は改定率を抑えるとともに、通学定期旅客運賃については家計負担に鑑み据え置きといたしますので、何卒ご理解いただきますようお願い申し上げます。

主な改定の内容

(1)改定日  2024年3月16日(土)
(2)改定率・増収率一覧

(単位:%)
上限運賃
改定率 増収率
定期外 10.5 9.3
定期 通勤 11.6 10.6
通学 0.0 0.0
9.3 8.5
合計 10.0 8.9

(3)初乗り運賃(3キロまで)   180円(現行170円)
(4)定期運賃割引率        通勤44.6%(現行45.1%)
                  通学84.3%(現行82.2%)

鉄道部門収支の実績及び推定

(単位:百万円)
項目 2021年度
(実績)
2024年度~2026年度(3年間平均)
現行 改定
収入 70,014 86,015 92,996
支出 81,067 94,354 94,354
差引損益 ▲11,053 ▲8,339 ▲1,358
収支率 86.4% 91.2% 98.6%

※端数処理のため、各項目の計と合計が一致しない場合があります
※支出については、申請上の計算方法で算出しています

運賃収入内訳

(単位:百万円)
項目 2021年度
(実績)
2024~2026年度(3年間平均)
現行 改定
定期外 30,316 43,761 47,811
定期 33,528 34,545 37,475
合計 63,844 78,306 85,287

※表中の実績を除く収入、支出は申請上の計算式に基づく現時点での推計値
※端数処理のため、各項目の計と合計が一致しない場合があります

需要見通し(輸送人員の推移および今後の見通し)

【実績】

(単位:千人)
項目 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度
定期外 125,789 127,444 125,621 75,036 86,207
定期 261,085 265,792 268,530 221,200 228,593
合計 386,874 393,236 394,152 296,235 314,800
前年比 101.6% 100.2% 75.2% 106.3%

【将来推定】

(単位:千人)
項目 2022年度 2023年度 2024年度 2025年度 2026年度
定期外 106,575 121,546 121,377 122,998 124,611
定期 234,483 239,873 238,092 236,938 233,857
合計 341,058 361,419 359,469 359,936 358,468
前年比 108.3% 106.0% 99.5% 100.1% 99.6%

※2022年度以降は申請上の計算式に基づく現時点での推計値
※端数処理のため、各項目の計と合計が一致しない場合があります

設備投資実績・計画

(1)設備投資実績と計画

(単位:億円)
2019
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
2023
年度
2024
年度
2025
年度
2026
年度
実績 実績 実績 計画 計画 計画 計画 計画
安全 112 87 96 115 116 135 152 138
サービス改善 32 19 13 10 28 11 21 31
輸送力増強 34 29 24 55 69 117 154 125
合計 180 136 135 181 214 265 328 295

※各項目億円未満切り捨て
※端数処理のため、各項目の計と合計が一致しない場合があります

(2)主要プロジェクトの内容
①安全に関する投資(2022年度~2026年度 合計657億円)

・車両の更新・リニューアル工事(代替車両の製造等)
・高架化・立体交差化事業(知立駅、喜多山駅、若林駅付近等)
・防災対策(耐震補強、法面対策等)
・踏切安全対策(AI画像解析による踏切安全性向上等)
・軌道強化(ロングレール化、PCマクラギ化等)
・老朽施設・設備の更新(車載機器、連動装置の老朽更新等)

②サービス改善に関する投資(2022年度~2026年度 合計103億円)
・駅設備等の改良(照明LED化、高架下の整備等)
・バリアフリー整備(金山駅ホームドア設置、トイレ整備等)
・お客さま案内の向上(「エムビジョン」の設置等)

③輸送力増強に関する投資(2022年度~2026年度 合計523億円)
・駅務機器の更新・新型機の導入
・名鉄名古屋駅改良工事

経営合理化の状況

 お客さまの利便性向上や沿線地域の活性化に取り組む一方で、前回運賃改定を実施した1995年度以降、厳しい経営環境の中でも運賃水準を維持し、事業を継続するため、以下のような取り組みをしてまいりました。

(1)運転部門および駅部門の省力化
 運転部門においては、現存する線区では1998年の蒲郡線をはじめ、ワンマン運転を各線区にて順次拡大し、現在は営業キロのおよそ3分の1にあたる150.2kmの線区においてワンマン運転を実施しています。
駅部門においては、当社は大手民鉄では2番目に多い275駅を有しており、業務合理化として、駅員の無配置化を推進してまいりました。現在はおよそ3分の2にあたる186駅が駅員無配置駅となっていますが、一方で、駅員無配置駅でも遠隔地から係員対応が可能となる「駅集中管理システム」を早期から導入(1999年試験導入、2001年本格導入)し、さらに2022年度からはお客さまと係員が互いの様子を視覚的に確認しながら通話できるモニター付インターホンの導入を進めるなど、駅のサービスレベルを落とすことなく、お客さまにご利用いただけるように努めています。
 これらの取り組みにより、2021年度では1995年度と比較して▲279人分、▲6.3%の省力効果がありました。
(※2005年に「管理体制の強化・堅固な保守基盤の確立」を目的とした㈱メイエレックと名鉄住商工業㈱の保守部門直営化の影響を考慮すると実質減少数は▲829人(▲16.7%))

(2)路線の廃止
 1999年以降、利用者数が極めて少なく、大量輸送機関という鉄道の特性を発揮できない線区については、地域と十分協議した上で、撤退するという苦渋の決断をしました。これによって、1995年には539.3kmあった営業キロは空港線の開業なども経て444.2kmとなり、現在の路線網となっています。

(3) コロナ禍での取り組み・構造改革
 新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴うさらなるコスト削減対応として、緊急的には空港アクセス特急ミュースカイの減便や駅窓口の削減、係員の配置時間短縮等に加え、安全に支障しない水準での設備投資の抑制や修繕費など経費の見直し、賞与削減などによる人件費の抑制、取引先との一時的な減額交渉等に取り組みました。
 こうした緊急的な取り組みだけでなく、需要がコロナ前の水準には完全に戻らないことや人口減少社会の到来を見据え、長期的な安定経営を目指した事業構造改革を推進しています。
 コストの適正化・省力化に向けて、新型駅務機器によるサービスの高度化や、駅窓口係員の配置見直し等による駅業務の効率化、3度のダイヤ改正とワンマン運転区間の拡大による輸送の適正化、線区特性に応じた運営効率化、保守管理部門の効率化・DX化を進めてきたほか、収益力の向上にも努めてまいりました。

運賃料金多様化の推進

(1)主な企画商品・おトクなきっぷ
 当社では、沿線自治体などと連携し、多くのお客さまに沿線の魅力的なスポットへお出かけいただけるよう、さまざまな商品を発売しています。
詳細は こちら

(2) manacaマイレージポイント
 manaca エリアの交通事業者(名古屋鉄道、名鉄バス、名古屋市交通局等)の鉄道やバスそれぞれの利用実績に応じて貯まる「manacaマイレージポイント」制度を導入しています。2021年度にはサービス内容を改定し、ピークシフト推進の一環として、
「平日昼間利用ボーナスポイント」を設定しました。
詳細は こちら


(3)乗り継ぎに関する割引制度
 交通系ICカードmanacaでのご利用時に当社と名鉄バスを90分以内に乗り継いで乗車した場合に適用する乗継割引制度や、当社と名古屋市交通局の特定の区間を普通乗車券、manacaおよび相互利用している交通系ICカードで利用する場合の乗継運賃の割引を設定しています。
詳細は こちら

利用者サービスの向上策

 当社グループの経営ビジョンに掲げている、使命「地域価値の向上に努め、永く社会に貢献する」ため、ハード・ソフトの両面から各種施策を実施してまいります。

(1)安全の確保に向けた投資・修繕
①高架化・立体交差化の継続

 今年度も実施する4件※の高架化工事のほか、現在協議中の案件も引き続き推進し、踏切の削減や渋滞の抑制に努めます。
※知立駅付近連続立体交差事業、喜多山駅付近立体交差事業、若林駅付近連続立体交差事業、苅安賀駅付近鉄道高架化事業

②老朽設備の更新、修繕
 当社は路線長が長いことから、駅数をはじめ、ともに大手民鉄では2番目に多い1,000以上の踏切や総延長50km以上の高架橋等、設備数量が多くなっています。これら設備の維持管理に加え、車両やお客さま案内設備の老朽化も進行しており、計画的な更新や修繕を実施してまいります。

③災害対策・保安度の向上
 激甚化する自然災害へ備え、高架橋などの耐震補強をはじめとする災害対策を進めるほか、さまざまな状況を想定した異常時対応訓練にも取り組んでまいります。また、先端技術を活用した安全向上にむけた取り組みとして、他業種と連携したAI画像解析による踏切の安全性向上や、ドローンを活用した災害対策の検討を図ってまいります。

(2)お客さまサービスのさらなる向上
①すべてのお客さまにご利用いただきやすい駅・車内環境の整備

 金山駅におけるホームドア設置をはじめ、駅トイレの整備の推進など、バリアフリー化にも引き続き取り組みます。また、券売機更新を契機とした駅員無配置駅での定期券販売やモニター付インターホンの設置等、有人駅と変わらないサービスが可能な駅を拡大してまいります。さらに、運転見合わせを含む列車運行情報などを駅の専用ディスプレイに表示する「エムビジョン」の導入や行先表示器の更新により、お客さま案内の拡充にも取り組みます。また、新型車両の導入や車両改造を計画的に進め、バリアフリー基準に適合し、お客さまに快適に乗車いただける車内環境を整備してまいります。

②WEB環境でのサービス拡充
 2022年にリリースしたMaaSアプリ「CentX」を活用し、鉄道などの移動と観光がセットになったお得なチケットの販売など、今後もコンテンツの充実を図り、地域のさまざまなパートナーとの連携・協業を通して、「公共交通の利用促進」および「沿線・地域の活性化」に貢献するほか、特別車両券の購入が可能な名鉄ネット予約サービスの機能拡充を図ります。

(3)社会の要請に応える価値の提供
①名鉄名古屋駅の抜本的改良

 使用開始から80年以上経過した名鉄名古屋駅について、リニア中央新幹線開業を契機とした行政の構想や中部国際空港アクセスの強化といった社会的要請を踏まえ、抜本的な改良を検討しています。
 名鉄名古屋駅は、コロナ前では1日30万人以上のお客さまにご利用いただいていた当社で一番ご利用の多い駅でありながら、地下駅で3面2線の構造であり、日中でも平均2分~3分間隔で多方面の列車が発着する非常に複雑な状況となっています。現在の3面2線の構造を4線化し、駅を拡張することによって、安全性や空港アクセスの利便性、お客さま案内の向上を検討してまいります。

②セキュリティ対策・異常時対応の強化
 防犯カメラを設置した新型車両の導入や、駅に刺股や防護盾といった防犯装備の配備に加え、警察・消防や自治体と連携した各種訓練の実施等、防犯・異常時対応の強化に努めてまいります。

③ESG/SDGsへの取り組み
 環境への取り組みとして、鉄軌道事業のCO2排出量削減目標(2030年度に2013年度比▲46%)を掲げ、環境性能に優れた新型車両の導入や駅照明・車両の室内灯・信号機等のLED化等を継続して実施します。加えて、継続的に紙製乗車券リサイクル率100%を達成しており、今後も引き続き取り組んでまいります。
 また、高齢のお客さまや障がいのあるお客さまにも快適に鉄道をご利用いただけるよう、駅係員・乗務員の「サービス介助士」の取得を推進するほか、進行する高齢社会を背景に社会課題となっている「認知症」への取り組みとして、当社従業員が認知症を少しでも理解し、鉄道をご利用する認知症の方やその家族をあたたかく見守り、必要な手助けができるよう「認知症サポーター」を継続的に養成し、当社主要各駅に配置します。
 さらに、精神障害のある方の社会活動への参加に寄与することからも、鉄道運賃の精神障害者割引を導入します。