澤井コーヒー本店

「名鉄×WAO!」の想いを コーヒーで表現!? 前代未聞の試み、 その舞台裏

名鉄グループの経営ビジョンスローガン「名鉄×WAO!」。このビジョンをもっと多くの人々に知っていただきたい――。そんな想いから、名古屋鉄道の広報部ブランディング担当が新たなノベルティ制作に挑戦しました。
それが「名鉄×WAO!オリジナルドリップバッグコーヒー」(非売品)です。ある偶然の出会いがきっかけとなり、「“名鉄”と“WAO!”、2つの異なるフレーバーでグループ経営ビジョンを表現する」というアイデアへとつながりました。パッケージデザインにとどまらず、コーヒーの味そのものに「名鉄×WAO!」の想いを込める。そんな前例のないコラボレーションが実現したのです。
今回は、オリジナルドリップバッグコーヒーの制作にご協力いただいた澤井コーヒー本店(本社:名古屋市東区泉)に広報部ブランディング担当の苧坂さんが訪れ、その舞台裏について語り合いました。

澤井 泰佑
(さわい たいすけ)

1992年、名古屋市生まれ。
1948年創業の自家焙煎コーヒー豆の専門店
「澤井コーヒー本店」(名古屋市東区泉)の3代目。
2024年に代表取締役として就任後、もともと住居スペースだった店舗2階を
カフェスペースにリノベーション。近年は公式ブログやSNSで
おいしいコーヒーの淹れ方や豆知識の発信などにも力を入れている。

苧坂 碧
(おさか あおい)

名古屋市育ち。2019年名古屋鉄道入社。
2025年4月に、名鉄グループ理念体系の浸透やブランドイメージの構築を担う
広報部ブランディング担当に着任。
名鉄×WAO!オリジナルドリップバッグコーヒー制作担当者。

名古屋鉄道広報部ブランディング担当 苧坂(以下苧坂):澤井代表、オリジナルブレンドコーヒーの制作では大変お世話になっています。きょうはどうぞよろしくお願いします!
澤井コーヒー本店 澤井代表(以下澤井代表):喋りすぎないか心配です(笑)。よろしくお願いします!

「幕引きの予感」から始まった
事業継承

「弁護士志望」から一転、
家業を継ぐ決意

苧坂:澤井代表は3代目でいらっしゃいますが、以前からお店を継ぐことは意識されていたんですか。
澤井代表:いえ、全く継ぐ気がなくて、僕もともと弁護士になりたかったんですよ。大学も法学部で、司法試験の予備校に通っていたんですけど、無理だなこれと思って(笑)。
苧坂:そうだったんですね! そこから事業を継ごうと決心されたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

工場併設の店舗には、昭和30年代から現役の富士珈琲機械製作所(現:富士ローヤル)製の15kg焙煎機が。澤井コーヒー本店ならではの、酸味が少なくまろやかな味わいがここから生まれる

澤井代表:就職活動をどうしようと考えていた時に実家である店舗に帰ってきたら、父と従業員、みんな65歳を超えていて。父も「この代で閉じる」って言っていたんです。その時、お店を閉めるか、僕がやるかの二択だなと。「これは僕にしかできないこと、使命だ!」と思って、若さと勢いで勝手に決めました。最初はそれぐらいの感覚でしたね。
苧坂:ご家族の反応はどうでしたか。
澤井代表:引いていましたね(笑)。「何言っとんの、あんた」みたいな。父は内心うれしかったみたいですけど、消極的でした。

「この味をなくしてしまうのは
もったいない」

苧坂:それでも「やろう」と思えた原動力は何だったのでしょうか。
澤井代表:一番は、うちのコーヒーはおいしいと感じていたことです。昔からお世話になった方にコーヒー豆を配ったりすると、皆さんお世辞を超えたリアクションが多いんです。「あれすごくおいしかったんだけど、通販で買えるの?」とか。

澤井コーヒー本店にはJ.C.Q.A. コーヒーインストラクター1級の資格者が2名在籍。営業日には店舗周辺がコーヒーの香りで包まれる

苧坂:うれしい反応ですね。
澤井代表:僕の中ではうちのコーヒーが当たり前だったんですけど、そういう反応を受けて「ひょっとしたらうちのコーヒーって、おいしいんじゃないか」って。「なくしてしまうのはもったいない!」そう思ったのが一番ですね。いい商品はすでにある。あとはそれをいかに知ってもらうかだけだと思ったので、「情報を広げることは僕、得意かもしれない」って。あんまり怖くはなかったです。

伝統と革新の狭間で、
共鳴した想い

苧坂:事業を継がれてから、77年続く伝統を守る上で、プレッシャーを感じることはありましたか。
澤井代表:そうですね。特に店舗を改築した時は、長年通ってくださっているお客さまから「味が変わるんじゃないか」という心配の声はありました。
苧坂:事業を継いでいく過程には、そういったご苦労があったんですね。

昔ながらの焙煎方法やコーヒーの味を広めることについて「感覚的には、伝統工芸と近いかも」と語る澤井代表

澤井代表:ずっと来てくださる方が多いからこそ、これまでのお店のイメージは、僕も大事にしたいんです。きちんとやるべきことをやりながら、新しいことにも挑戦する。そのバランスが大事だなと常に感じています。
苧坂:おっしゃる通りですね。常連のお客さまが安心して通える「変わらない部分」があるからこそ、「新しい挑戦」がより際立って魅力的に映るんですよね。私たちも、「名鉄×WAO!」を経営ビジョンスローガンとして、今後もっと新しいことに挑戦していくという決意を掲げた中で、いままで交通事業を中心に何よりも大切なものとして維持してきた「安全」、そこから生まれるお客さまからの「安心」や「信頼」といった価値については今後も守り続けなければいけないと考えています。
澤井代表:なるほど、近いものがありますね。
苧坂:全く違う業種ですが、「地域に寄り添う存在でありたい」という意味では名鉄グループと澤井コーヒー本店さん、とても似ているかもしれないですね。

前代未聞の「無茶ぶり」と、
シンクロする想い

「メッセージを味・フレーバーで
表現できますか?」

苧坂:今回のコラボは、私と同じ広報部のメンバーが澤井代表と名古屋商工会議所のイベントで出会ったのがきっかけでしたよね。
澤井代表:参加者の皆さんに、ご挨拶代わりにドリップバッグのコーヒーをお配りしていたんです。そうしたらSNSでDMをいただきました。

“WAO!”フレーバーを初めて飲んだ感想について「カフェインレスとは思わず驚きました」と語る苧坂さん

苧坂:そこから、今回の無茶ぶりにつながったんですよね(笑)
澤井代表:「“名鉄”と“WAO!”、それぞれをイメージしたコーヒーとか作れます?」って言われた時、すごく面白いな、やってみたいなって思って。すごく大変なプロジェクトになる気はしたんですが、なんかワクワク感が勝って、すぐに「できます」って言っちゃいました(笑)。
苧坂:ありがとうございます(笑)。私たちの経営ビジョン「名鉄×WAO!」のロゴは、赤色の「名鉄」と青色の「WAO!」が掛け合わさっていて、それぞれに想いを込めています。赤は昔から名鉄グループを象徴する電車のスカーレットを重ねて、私たちがこれまで培ってきた安全・安心のイメージ。そして青は、これからお届けしていきたい驚きや感動、憧れにつながる新しい価値のイメージです。そしてこの「想い」を、お取引先さまにも広めるとともに感じていただくために、味やフレーバーで表現してください、と……。
澤井代表:皆さんのビジョンや伝えたい想いを、ちゃんと受け止めきれてないままアウトプットするのは嫌だったので、時間をもらって、じっくり取り組みましたね。

「伝統」と「驚き」を一杯に込めて

苧坂:メッセージを味やフレーバーで表現するというのは、本当に難しかったと思います。
澤井代表:まず「名鉄」ブランドの安全・安心という伝統と、「WAO!」の驚きや感動、憧れにつながる新しい価値。この二つをどう表現しようかと。

「名鉄×WAO!」というグループ経営ビジョンスローガンに込められたメッセージが反映されたパッケージデザイン

苧坂:大学図書館の論文まで参考にしていただいたと聞きました! そんな試行錯誤を経て、3パターンのサンプルを作っていただきました。
澤井代表:それで実際に試飲してもらったら、「カフェインレス、いいよね」という反応でしたね。
苧坂:健康にいいとして人気が高まってきているカフェインレスコーヒーは、コーヒーの「新しい価値」としても注目されているため、「名鉄×WAO!」に込められた想いと重なりを感じました。澤井コーヒー本店のカフェインレスコーヒーを飲む前は、味が薄いイメージがあったのですが、全くそんなことなくて。まさに「名鉄×WAO!」として提供したいような驚きと感動がありました。
澤井代表:“名鉄”フレーバーの方は、電車や喫茶店のように、そこにあって安心するような存在を目指しました。名古屋の喫茶文化らしい少し深煎りの、コクのある味わいを出すために、インドネシア産のスマトラマンデリンという豆を加えています。
苧坂:“名鉄”フレーバーは日常にそっと寄り添うような味で、私たち名鉄グループもこんな存在でありたいと思いました。「名鉄×WAO!」のビジョンを二つのフレーバーで120%再現していただいたので、お取引先さまにも自信を持って配って回りたいです!

伝統を守り、未来を創る。
地域を想う二社の挑戦

左手の小窓からコーヒーをテイクアウトで購入することができ、氷までコーヒーで作ったアイスコーヒーと、深煎りのコクと香りを楽しめるホットコーヒーを提供。近隣に勤める人や住民が訪れる

「お預かりしている」という感覚

苧坂:澤井代表はお店を継がれてから、日々どんな想いで仕事に取り組んでいらっしゃるんですか。
澤井代表:このお店も、コーヒーの味も、今はすべて僕が一時的にお預かりしているものだなっていう感覚がすごくあるんです。
苧坂:「お預かりしている」ですか。印象的な表現ですね。
澤井代表:はい。うちのコーヒーを「おいしい」と飲んでくださるお客さまや、この商店街の地域の方々から、皆さんの日常を、その想いをお預かりしている。だから、その預けていただいたものに、いかにきちんとお返しができるか。皆さんが僕に預けてくれているから、その分頑張ろうって思えます。今回の「名鉄×WAO!を味やフレーバーで表現できますか?」っていうご依頼も、本当に大きいお預かり物をしたなって。だから、すごく燃えるんですよ。
苧坂:私たちの依頼に対して、澤井さんがそこまで考えてくださり本当にありがたいです。想いを預けてくれた相手を考える。そこに自分の想いを乗せてお客さまや地域にお返しする。私もこれから仕事で心掛けていきたいと思いました!

レトロなたたずまいの店舗。時期によってコーヒーと共に楽しめる焼き菓子の販売や、コーヒー教室なども開催されている

共鳴する理念、それぞれの挑戦

苧坂:これまでのお話、私たちが掲げる「名鉄×WAO!」のビジョンとすごくリンクすると感じました。名鉄グループは、これまで提供してきた安全・安心、そこから生まれる地域の方からの信頼を何よりも大事にしながら、今後はお客さまの期待を超えられるようなグループならではの新しい価値を地域に提供していくことを目指しています。守るものは守り、新しい価値を磨き上げる。掲げる言葉は違えど、澤井コーヒー本店さんと私たちは同じ方向を向いていると感じます。
澤井代表:僕たちも、今後はさらに地域のみなさんとも一緒に企画などをやってみたいですね。例えば、コロナ禍でなくなってしまった商店街のお祭りを復活させたいんです。僕たちが子どもの頃に見ていた景色を、今の子どもたちにも見せてあげたい。この街に住んでいて良かったなって思ってもらえることを、この店から仕掛けていきたいです。

20種類を超える豊富なラインナップのコーヒー豆を販売。オンライン販売も行っている

苧坂:私たちも、地域の皆さまの期待を超えるワクワクを提供できるように頑張ります! きょうは本当にありがとうございました。

対談を終えて

澤井コーヒー本店
澤井代表ひとこと

私たちの企業姿勢は「いまある『好き』を大切に、まだ見ぬ『好き』のきっかけに」です。「名鉄×WAO!」という壮大なグループ経営ビジョンスローガンをコーヒーで表現する挑戦は、会社にとってもこれまでにない経験で、刺激的なきっかけになりました。おいしいコーヒーをただ売るだけではなく、誰かの人生を豊かにするような付加価値を提供していけるよう、頑張っていきたいなと思います。

担当者ひとこと

今回、澤井代表のコーヒーと向き合う真摯な姿勢、そして伝統を預かっているという謙虚な想いに触れ、深く感銘を受けました。私たち名鉄グループもまた、お客さまや地域からの期待や想いに対して、全力で応えていきたいと思います。

澤井コーヒー本店

住所

〒461-0001
名古屋市東区泉二丁目11-8

  • 創業年:1948年
  • 事業内容:コーヒー豆の卸販売及び小売り
  • 代表取締役:澤井泰佑
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名鉄×WAO!って何?「名鉄×WAO!」は、名鉄グループの経営ビジョン私たちは、信頼の源泉となる「安全」を基盤として、「驚き」から「感動」、そして「憧れ」につながる名鉄グループならではの価値を提供し続けますを一言で表現したスローガンです。その根底にあるのは、従業員の「地域や社会に貢献したい」「お客さまにもっと喜んでもらいたい」という「想い」です。「名鉄×WAO!」は、こうした「想い」を起点として、誰よりも地域の人々の想いや社会課題に応え、期待や想像を超える価値を提供し、豊かな地域・社会を実現すること、その決意や取り組みそのものを表す合言葉でもあります。私たちはこれからもひとりひとりの「想い」を胸に、「名鉄×WAO!」が溢れる地域や社会を目指して参ります。