有松絞り 有限会社絞染色 久野染工場

名古屋を 旅の目的地に。 伝統と挑戦が紡ぐ 感動体験

名古屋には、世界を魅了する“本物”の文化がある――。そんな想いから、名鉄グループは名古屋が誇る「サムライ文化」をテーマにしたオーダーメイドツアー『THE NAGOYA Through “SAMURAI” Eyes』を2025年11月よりスタートしました。ものづくりやグルメなど、19種類ものプログラムを自由に組み合わせ、体験できるツアーです。
なかでも注目は、江戸時代の町並みを今に残す「有松」での体験ツアー。有松絞りの老舗・久野染工場(名古屋市緑区境松)で、自分だけの有松絞りの作品を仕立てることができます。
「名古屋でしかできない体験を提供したい」という名鉄グループの想いと、「本物の技を未来へつなげたい」という職人の情熱。体験ツアーは、二つの想いが重なり実現しました。ツアーを企画した若江さんと古川さんが、久野染工場の久野社長と、ツアーに込めた想いや有松の未来を語り合いました。

久野 剛資
(くの つよし)

1955年生まれ、名古屋・有松育ち。大学卒業後、家業の久野染工場の4代目を継ぐ。
2017年に伝統工芸士に認定。有松絞りの伝統を大切にしながら、
ファッションやインテリアなど新たな表現に挑戦し、
イッセイミヤケやヨウジヤマモトといったアパレルブランドとのコラボを実現。
絞り体験やワークショップなども積極的に行い、
伝統技術・文化の継承に取り組む。

若江 翔平
(わかえ しょうへい)

名古屋市育ち。2013年名古屋鉄道入社。
地域連携部ツーリズム担当所属。
『THE NAGOYA Through “SAMURAI” Eyes』を
企画の立ち上げから担当している。

古川 亜希
(ふるかわ あき)

岡崎市育ち。2025年名鉄観光サービス入社。
旅行会社の立場から、お客さまの意見を
『THE NAGOYA Through “SAMURAI” Eyes』に盛り込んだ。

有松絞り

江戸時代から名古屋市有松地区に伝わる「有松絞り」。東海道を行き交う旅人の土産物として人気を集め、全国にその名が広がった。布の縫い方やくくり方の違いで生まれる独特の模様で知られ、技法は100種類以上にもおよぶ。手仕事ならではの緻密で豊かな表現力が評価され、国の伝統的工芸品にも指定されている。

名古屋鉄道 若江(以下、若江):『THE NAGOYA Through “SAMURAI” Eyes』が形になった今、改めてお話できることをうれしく思います。
久野染工場 久野社長(以下、久野社長):こちらこそ。僕たちのドラマの始まりですからね。今日は何でも話しますよ。
名鉄観光サービス 古川(以下、古川):久野さんの“久野節”が聞けるのを楽しみにしていました(笑)。よろしくお願いします。

名古屋・有松で
「ここでしかできない体験」を

若江:名古屋が世界から素通りされてしまう――。オーダーメイドツアー『THE NAGOYA Through “SAMURAI” Eyes』の企画の背景には、そんな課題感がありました。特にツアーのターゲットである海外の富裕層にとって、名古屋は東京から京都や広島へ向かうルートの通過点になりがちでした。

質の高い体験コンテンツの必要性を説く若江さん。歴史や文化が根付く有松は貴重な地域だと語る

古川:そうですね。名古屋が旅の目的地になっていないという課題は以前から感じていました。
若江:名古屋に来てもらうための、ここでしか体験できない魅力的なコンテンツが必要でした。そこで世界的にブームとなった海外ドラマ『SHOGUN 将軍』から着想を得て、改めて「サムライ文化」に注目したんです。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という三英傑は、皆この地にゆかりがある。尾張藩が保護した有松絞りのような伝統文化が、現代のトヨタ自動車に代表される「ものづくり名古屋」の基盤になっている。この歴史的なストーリーこそ、名古屋ならではの魅力だと考えました。
久野社長:おもしろい視点だよね。有松絞りは旧東海道を行き交う旅人へのお土産として発展してきた歴史がある。まさに、サムライの時代から続く文化です。

有松絞りが世界を救う

有松絞りについて語り出すと止まらなくなる久野社長。有松絞りの講座を開催するたびに、自分自身が刺激を受けていたという

若江:サムライの歴史と、ものづくりの名古屋。企画立ち上げにあたり、そのストーリーを語っていただく有松でのパートナーを探していました。当初、私たちは「有松で尖ったことをしていて、喋りがおもしろい方はいませんか?」と地域の方に相談したんです(笑)。そこでご紹介いただいたのが、イッセイミヤケやヨウジヤマモトといった世界的なブランドとコラボし、伝統を守りながら常に挑戦を続ける久野さんでした。

久野染工場がアパレルブランドとコラボして生まれたスカーフ。左と中央手前がイッセイミヤケのアイテム。合成繊維の布に付けた美しい絞形状を、熱と蒸気によって定着させる技法(絞形状記憶)を取り入れて製作

久野社長:喋りがおもしろいかはさておき(笑)。有松絞りは、布をくくる、挟む、縫うというシンプルな技法ですが、その可能性は無限大。「アップサイクル」もできるんですよ。つまり、一度は役目を終えた素材に絞りの加工を施し、新たな付加価値を与えることもできる。伝統工芸というだけでなく、未来の課題を解決する可能性を秘めた技術なんです。
古川:「有松絞りは世界を救う」とおっしゃっていますよね。
久野社長:大げさに聞こえるかもしれないけど、本気ですよ。武器を作るのではなく、人の手で美しいもの、豊かなものを生み出す。この手仕事の輪が世界に広がれば、それは平和につながるはずだと考えているんです。

お客さまに感動を。
協働で体験づくり

驚き「名鉄が変わろうとしている」

若江:体験ツアーの協働のお願いを、久野さんは本当に快く受け入れてくださいました。話が来たときはどう感じられましたか?
久野社長:驚きましたよ。だって、名鉄さんが僕らみたいな地域の事業者に頭を下げに来るなんて、今までなかったことだから。「ああ、名鉄は本気で変わろうとしている」って直感的に思いましたね。その熱意に動かされたことで、迷わず手を取り合おうと思えたんです。

久野染工場の染め場の風景。今回のツアーでも、ここで、自分だけの有松絞り作品を仕立てる絞り染め体験ができる

若江:そう言っていただけて本当に励みになりました。ただ、そこからの体験プログラム作りは試行錯誤の連続でした。有松絞りの新しい技法「絞形状記憶」を体験に取り入れたところ、プレツアーに参加した外国人の方から「もっと伝統的なものがやりたい」という声が多かったんですよね。

「特別な思い出」を持ち帰ってほしい。そんな想いから、古川さんは有松絞りの魅力を体感してもらえるよう、ツアー内容を何度も練り直した

久野社長:職人としてはつい最新の技術を伝えたくなる。でも旅の体験としては、まず「楽しい」「感動した」が入口なんだよね。
古川:そうですね。「楽しい」「感動した」という体験が、お客さまにとって特別な思い出になってほしい、と思っています。だからこそ、体験ツアーの内容は、議論を惜しみませんでした。結果として、まず久野さんから有松絞りの歴史や哲学をお客さまにじっくり説明していただき、その上で「メイドインジャパン」のシルクストールを染める体験をする流れになりました。

有松の伝統を守るために、
挑戦を続ける

有松絞りから始まるまちづくり

若江:『THE NAGOYA Through “SAMURAI” Eyes』がスタートした今、ここからが有松のまちづくりの「本当の始まり」だと実感しています。名鉄グループはこのツアーと並行して、まちづくり会社「有松未来創造(アリミラ)」に関わり、有松地区の古民家を宿泊施設や飲食店として活用する事業を進めています。
久野社長:有松絞りという文化を通して人と人がつながる。人と人の温かさを感じながら有松を旅し、暮らすようになるといいね。
若江:はい。この体験ツアーで有松の価値を深く理解してくださった方に、実際に滞在していただく。そして地域にお金を落としていただくことで、有松絞りという伝統工芸を未来へつないでいく。その一助になりたいんです。

人の「輪」を広げたい

白い壁が目印の久野染工場。実際に体験ツアーで作ることができる有松絞りのストールは、広げた瞬間に一人ひとり異なる柄が広がる

久野社長:後継者不足が課題となる中で、こうして新しい仲間ができて、一緒に新たな未来を目指せるのは本当にありがたい。私は、有松絞りを単なる「工芸」ではなく、「産業」として進化させなければ先はないと思っています。
若江:産業、ですか。
久野社長:そうです。手仕事の良さは最大限に生かしつつ、染色工程やデータ管理など、機械化できる部分は積極的に取り入れる。そうして生まれた時間で、人間はもっと付加価値の高い、創造的な仕事に挑戦できる。産業として確立することで、若い世代が「ここで働きたい」と思える場所にしたいんです。

有松絞りの文化継承やまちづくりには、お客さまに単なる事実を伝えるだけでなく、想いを伝えることがとても大切だと話す久野社長

古川:伝統を守るために、挑戦を続けるということですね。
若江:素晴らしいですね。久野さんのお話を聞いていると、私たちのやっていることも、もっと大きな未来につながっているんだとワクワクします。
古川:本当に。有松絞り体験の思い出をお客さまに持ち帰っていただき、周りの方へ広めてもらう。その輪が広がって、いつかはこのまちの担い手や有松絞りの後継者を生み出せたら、これほどうれしいことはありません。
久野社長:このメンバーなら、それができると信じています!

対談を終えて

久野染工場 久野社長ひとこと

有松絞りを通したまちづくりの味方がいることがとても心強いですね。有松絞りの後継者不足を解消するには、ものづくりとしての魅力を広める仲間が必ず必要なんです。私自身が実感していることですが、技術は一人で発展することはなく、多くの人と交流することで育つ。まずは誰もが有松絞りに興味を持ち、集まってくるようなものづくりを次世代に見せていきたいと思います。今はその下準備の期間。その環境整備を、これからもやれるだけやりたいですね。

名古屋鉄道 若江ひとこと

「名古屋が世界から素通りされてしまう」。そんな危機感から始まったこの企画が、久野さんのような熱い情熱を持つ地域の事業者さんと出会えたことで、単なる旅行商品開発ではない、もっと大きな意味を持つものになりました。地域の歴史や文化に敬意を払い、未来を共に創っていく「地域共創」こそが、これからの名鉄グループが果たすべき役割なのだと、この取り組みを通して改めて実感しています。「名鉄、変わったね」と地域の方に言っていただけるよう、これからも挑戦を続けます。

名鉄観光サービス 古川ひとこと

作り手の想いとお客さまの期待、その二つを最高の形で結びつけるのが私たちの役割。試行錯誤の連続でしたが、お客さまにとって忘れられない思い出を届けたい一心でした。実は小学生の頃、祖母から有松絞りの浴衣を譲ってもらい、今でも大切にしているんです。私にとっても思い出深い有松絞りが、また誰かの特別な記憶になる。その感動の連鎖を生み出せることに、大きなやりがいを感じています。この小さな感動の輪が、いつか有松という地域の未来を担う、大きな力になることを心から願っています。

有限会社絞染色
久野染工場

住所

〒458-0820
名古屋市緑区境松1丁目609

  • 設立年度:1912年
  • 事業内容:絞り染色加工全般、絞りの体験
  • 代表者:久野剛資
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名鉄×WAO!って何?「名鉄×WAO!」は、名鉄グループの経営ビジョン私たちは、信頼の源泉となる「安全」を基盤として、「驚き」から「感動」、そして「憧れ」につながる名鉄グループならではの価値を提供し続けますを一言で表現したスローガンです。その根底にあるのは、従業員の「地域や社会に貢献したい」「お客さまにもっと喜んでもらいたい」という「想い」です。「名鉄×WAO!」は、こうした「想い」を起点として、誰よりも地域の人々の想いや社会課題に応え、期待や想像を超える価値を提供し、豊かな地域・社会を実現すること、その決意や取り組みそのものを表す合言葉でもあります。私たちはこれからもひとりひとりの「想い」を胸に、「名鉄×WAO!」が溢れる地域や社会を目指して参ります。